12.11感染症研修会、講師先生への追加質問Q&A

 12.11感染症研修会「新型コロナのアップデートと冬季感染症の課題」に、沢山の方々にご参加いただきました。参加実績は、ZOOM参加 78件、YouTube視聴回数153回でした。受講後アンケートも100名の方にご回答いただいております。
 アンケートの中で、講師先生への追加質問もお寄せいただいており、山藤先生よりご回答をいただきましたので、掲載させていただきます。
 冬季感染症対策の参考になさって下さい。

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Q1-①:
 レプリコンワクチンに対して、日本看護倫理学会が表明した懸念を表明した件は、医療側とどのように話し合い、理解を得て現場でワクチン接種されているのか疑問に思います。この件は、デマ等でなく、開発国や先行治験国で認可されていないという事実に基づくものであるので、知りたいです。

A1-①:
 (上記日本看護倫理学会の)声明のうち、「この(レプリコンワクチンが開発国や先行治験国で認可されていない)状況は、海外で認可が取り消された薬剤を日本で使い続けた結果、多くの健康被害をもたらした薬害事件を思い起こさせます。」といった趣旨のところでしょうか。もしそうであれば、「認可取り消し」と、「未認可」という全く異なる状況を結びつけている、という問題があります。 
 2024.12.12:欧州医薬品庁HPによると、レプリコンワクチンの承認を推奨する肯定的意見が採択されました。 ( https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/kostaive )
 Meiji Seikaファルマ の見解もご参照ください。
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/pdf/notice/notice_01.pdf )
 レプリコンワクチンにつきましては、講演中に言及しましたように、臨床的な利益・稀な不利益については、従来のmRNAに比べれば現時点ではまだ十分判明してないと言えます。そのため、PMDAの審査報告書の「承認条件」にあるように、今後、安全性のデータを早期に収集することが求められます。
( https://www.pmda.go.jp/drugs/2023/P20231122002/780009000_30500AMX00282_A100_3.pdf )

 

Q1-②:
 風邪が“五類感染症”に25年4月から移行されるニュースが取りざされています。ポイントは、2点あります。まず、今回5類に入れた理由は新たな未知の感染症の調査が目的であるのは理解できます。WHOは、咳とか呼吸の苦しさがある方で38℃以上のみを報告すればいいとしています。しかし、日本では、“発熱”という項目を入れていません。熱がなくても咳がある、鼻詰まりがあるというものを報告しなければいけないでしょう。医療側の負担もさることながら、現場、福祉、介護、学校、経済に大きな混乱が予想されます。医療のデジタル化も進んでいない中、なぜ日本は発熱の項目を入れずに話を進めたのでしょうか? 医師会として、反対はなかったのでしょうか? 今回の講師先生からも入院患者がコロナ等で増えている話を聞くと、医療機関が逼迫することが予想されますがいかがでしょうか?

A1-②:
 本件に関するパブリックコメントが3万件以上あったようで、厚労省の考え方が公開されており、( https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000283376 )  厚労省は、「届出の様式等を工夫すること、報告対象を明確化する、患者数を報告する定点医療機関の数を見直すこと等により、大きな業務負荷、変動が極力起こらないように配慮する」とあります。
 また、厚労省HPによりますと、( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ari.html ) 「急性呼吸器感染症(ARI)を5類感染症に位置付けることによる、患者の皆様への影響はありません。診療上の扱いも何も変わりません。」・「急性呼吸器感染症(ARI)定点医療機関には、多くの5類感染症の定点把握と同様に、1週間当たりの患者数を報告いただくようお願いします。発生届のように患者ごとに届出を作成・報告いただく必要はありません。」 とのことです。

 

Q1-③:
 Q1-②に付随しますが、風邪が“五類感染症”に引き上がることにより、インフル、コロナと同等に扱われます。学校保健安全法施行規則第 18 条ないし第19条や多くの会社では感染症は、就業規則(第五類感染症)で通学・出勤停止で5〜7日休まなければならないとなります。寒暖差アレルギーや花粉症などの症状でも風邪症状のようなこともありえます。リモートワークや特別休暇扱いできる人達はいいでしょうけど、子どもが学校に行けなくなれば、親も休まなければならないことも多くなるでしょう。また、その逆も然りで、風邪は誰もがかかりうる話です。その分、学校では対応に追われ、休んだ親の在勤社員、会社の負担も増えるでしょう。私たちも含めたエッセンシャルワーカーも影響を受けるでしょう。そして、子どもや自身が風邪症状が多くなることで、有給休暇もなくなり、欠勤扱いになるなど、社会経済にも混乱が生じることが大いに予想されます。
 このような予測が現時点で考えられる中、講師先生には、4月からの風邪症状に対する診断方法や診断書発行の有無、風邪キットの開発や普及の有無、医療費負担の増加、定点地点の報告、アレルギー症状との差別化など。現時点で分かっていること、課題はどんなことがあるか伺いたいです。

A1-③:
 こちらもパブリックコメントに対する、厚労省の考え方が公開されていますのでご参照頂けたら幸いです。( https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000283376 )「風邪(かぜ)により就業制限等になるのは反対」というコメントに対して、厚労省の見解としては、「急性呼吸器感染症定点や同病原体定点に対し、 患者数の報告及び検体の提出を求めることのみ を予定しています。」・「急性呼吸器感染症に対して一律、新型コロナウイルス感染症対応時のような隔離措置を行うことは想定しておりません。」と、回答がありました。
 その他、経済や医療費への影響につきましても、「本サーベイランス実施において、経済が止まる懸念は想定されていません」・「本サーベイランス実施において、医療費の増加 は想定されていません」とのことです。
 また、厚労省HPによりますと、( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ari.html )  「急性呼吸器感染症(ARI)が5類感染症に位置付けられることで、就業制限や登校制限の対象とはなりません」 とあります。

 

Q2:
 ワクチン接種以外にLong COVIDを防ぐために有効な方法はありますか?

A2:
 Long COVIDを防ぐために、ワクチン以外には、感染そのものを防ぐというのが最も有効、というのが現状です。

 

Q3:
 先生個人の見解で構いませんが新型コロナウイルス対策の院内感染対策にはやはりN95マスクは必須でしょうか。(エアロゾルが発生しない場面でも)また、病棟などは(感染者が発生していない)場合も常時着用を推奨した方が良いでしょうか。コストは無し(度外視)と考えた上で良いので、先生個人の見解を教えて下さい。

A3:
 医療者を最も確実に感染から守る方法は、適切に装着されたN95マスクであると考えています。ただし、N95マスクはコストの問題以外にも、自分の顔の形にあったものを用いて、適切にフィッティングしないと、頭痛や息苦しさなど、装着による問題が出てくることが少なくありません。また、種類によっては、つけ外しを繰り返すとフィット不合格になりやすい場合もあります( JAMA Netw Open. 2024;7(1):e2353631. )したがって、N95マスクが常に完璧であるとも言えません。
 一方で不織布マスクは、N95マスクとフィルター性能自体が大きく異なるわけではないため、不織布マスクではだめということでもありません。
 そのため、おもにマスクのフィット性能(=顔とマスクの隙間が少ないか)の違いが問題となります。実際、フィッティングテスター( SHIBATA MT-05U, 粒子サイズ0.3μm )を用いてテストをすると、以前の講演でデータをお示ししましたように、よくフィットした不織布マスクはN95マスクに近い結果がでたりします。
 不織布マスク使用上の注意点としては、鼻の金具部分が適切に使用されず、鼻が出かかっていたり顎だけに着用しているケースを見かけたりしますが、鼻が出かっていては感染性粒子(IRPs)の吸入を防ぎきれません。ただし、フィットが不十分なN95マスクのほうが、フィットした不織布マスクよりも感染リスクは低いというシミュレーション結果もあります。(Proc Natl Acad Sci U S A.2021;118(49):e2110117118)
 以上を踏まえ、流行状況や病棟の(換気を含めた)感染リスクの高さに応じて、適宜マスクの種類を使い分けるのが良いのではないかと考えています。

 

Q4-①:
 若年者から高齢者まで、インフルエンザワクチンと同じように、コロナウイルスワクチンも勧めたほうが良いでしょうか。つまり、リスクがデメリット=副反応、副作用など、コストは除く、でしょうか。
 従来のmRNAワクチンと、増殖型RNAワクチンは、コロナウイルス感染症に対して同様の効果、デメリットとして、患者さんに勧めてよいでしょうか。
Q4-②:
 新型コロナについて今は高齢者へのワクチン接種を推奨していますが後遺症や再感染、重複感染を考えると若者や働き盛りの方への接種はいいのでしょうか。

A4-①、A4-②:
 副反応とのバランスを鑑みて、接種できるなら接種したほうがよい、と思います。( ただし、いつ感染したか、最後にいつワクチン接種したかによって、どのタイミングで接種するのが最適なのかは個人差がありますので、悩む場合は医師にご相談ください )

 

Q5:
 ワクチン接種の副作用について。

A5:
 講演の配布資料25に、レプリコンワクチンの主な副反応については記載いたしましたが、
添付文書( https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/780009_631341PE1020_1_02 ) や、
審査報告書(
https://www.pmda.go.jp/drugs/2023/P20231122002/780009000_30500AMX00282_A100_3.pdf ) などもご参照頂けたら幸いです。